日常に満たされることのない現代の若者たちが偶然集まる。
学生時代に鍛えた肉体を、仕事の毎日に
すっかり鈍らせてしまったオーバーワークのサラリーマン。
留年してまでも自分が本当に進みたいと思う道を
探そうとしている偏屈な大学生。
何も考えずただ車を買うお金欲しさに
キャバクラで働き始めた今時の十八歳の少女。
男性顔負けにバリバリ仕事しながらも
内心は矛盾だらけを抱えているキャリアウーマン。
彼らの悩みはそれぞれ現代らしいもので、
はっきりとした将来の答えがない現代社会でこそのことであった。
そんな彼らも流されるまま生きる一方で、
内心ではその怠惰な生活を打開する方法を模索していたのであった。
そんな時、偶然出逢った彼ら四人に、
ふと浮かび上がってきた本物のアイディア。
社会にこれほど様々な選択肢がある中で、彼らは自分たちの力だけで
桃の花を咲かすという現代らしからぬシンプルなアイディアを選ぶ。
彼らはその作業を通して自分たちのあるべき道を探そうとする。
太陽の下で土を耕して汗をかく。
およそ現代の若者とはかけ離れた作業をあえて自ら選んだのだ。
彼らの地道な努力が重なり、一年後桃の花が咲く時、
それぞれで何か確かなものを手に入れた彼らがいた。
この作品は、奇をてらい端的な一面ばかりにスポットを浴びさせる
現代小説に対しての挑戦でもある。
ここには特別な登場人物が出てくることもないし、
何か大きな出来事が起こるわけでもない。
そこにあるのはただ純粋な現代の若者の悩みである。
昭和の戦後混乱期からの復興と高度成長を成し遂げてしまった今、
逆に豊かな時代に行く宛てをなくして迷走を続ける
新現代を迎える人々にこの作品を放ちたい。 |