日本語の共通語は明治維新後に導入検討され、
大正時代に東京で教育ある人々の間で使われる言葉である
東京語が指定されることになった。
江戸時代には各藩それぞれの独自色が濃く、
民衆は自由な往来を制限されていたことから共通した言葉は存在しなかったが、
東京は長年日本の首都として栄えた土地だけに
全国からの様々な影響を受けて独自の変容を遂げつつも、
他の方言と比較すればまだ共通しやすい言語が東京語であった。
言語は「方言周圏論」で言われる通り中央から地方へ広がって行くものであり、
地理的に隣接していたことで京阪アクセントから直接の影響を受けた
関東と中国・九州北部のアクセントには似たものが多く、
関東の言葉は日本全国で最も多く同系統の言葉が使われているという意味で、
全国の共通語とするのに妥当的なものではあった。
「日本語のアクセントは、高低のアクセント」であると言われ、
語の区別を音の高さと低さを使って表現している。
そのうちの東京語には社会的に習慣と定まっているものがあり、
それが東京語を東京語らしくさせているのだがそれを挙げてみよう。
東京語のアクセントの特徴としてまず一番分かりやすいのが、
語頭の二つの音節の高低の順序で、
他の方言では1・2音節目が(高-高)もしくは(低-低)となるものが
見受けられるが、東京語に関しては必ず(高-低)もしくは(低-高)となっている。
例えば「着物」は東京アクセントでは(低-高-高)となるが、
京阪では(低-低-低)となる。
これが互いにとって通常では発音することのないアクセントになることから、
お互いがお互いの言葉を学ぼうとしてもこのアクセントの壁が習得を難しくさせている。
東京からすれば京阪の言葉が穏やかな印象に聞こえがちなのは、
京阪アクセントでは語頭の二つの音節が高低を変えずに発音しており、
その印象によるものなのであろう。
東京アクセントでは単語を越えて文節を含める時に、
語頭だけではなくどの語の音節も
前後の音節との相対的な関係によってアクセントの強弱が変わってゆく。
その強弱の度合いは言葉を発する人の状況によって微妙に変化してゆくので
一概にルール化することができない。
一方で動詞に助詞や助動詞が付いた場合には、
ルール化したパターンで変化する語もある。
例えば「休む」(低-高-低)という動詞が名詞になると、
「休みが」(低-高-高-低)となり、
このように語尾が下がる語を下がり目あり(起伏式)と呼び、
「終わり」(低-高-高)が名詞になり「終わりが」(低-高-高-高)となるのは
下がり目なし(平板式)と呼ぶ。
この変化は動詞だけではなく形容詞でも発生する。
場によって変わってゆくものとは別に、
ルール化された変化も東京語のアクセントにはあるということである。
語の羅列にアクセントの強弱をつけることによって
その語の意味を特定する弁別機能は、
京阪のものに較べて高低のパターンが少なく東京語は乏しい。
一方で、その語や文節のどこで切って意味するものを把握するかという
統語機能に関しては逆に東京語は優れている。
例えば「もつなべ」を(低-高-高-高)と(高-低 高-低)と発音分けすることで
「モツ鍋」と「持つ鍋」を意味分けできる機能は、
高いアクセントがどこで低くなるかというのをキーに判断することができる。
アクセントの高低パターンを考えてみると、
東京語には第1・2音が同じ高低であることはないというルールがあるので、
他の方言よりも発音パターンが少ないという性質がある。
単語そのものに平板式か起伏式かの性質が隠れているし、
単語としてだけではなく助詞や助動詞が後ろに付いた際に
どこが音の下がるポイントになっているのか、
起伏式の場合も言語の「頭高型」か真ん中だけが高い「中高型」なのか
語尾の「尾高型」なのかという細かいルールがあり、細分化されている。
東京語の音節とアクセントの型を追ってゆくと
2音節語には平板式が1つと起伏式が2つの計3つのアクセントの型があり、
これが5音節語になると平板式が1つと起伏式が5つの計6つのアクセントの型がある。
このように東京語には「音節の数プラス1」のアクセントの型が備わっているのだが、
これはいわばアクセントの型の可能性の枠を示したものであって、
実際に多く使われるのはそのうちのひとつかふたつが
ほとんどであることも忘れてはならない。
こうした東京語のアクセントは関東のみならず、
同系のものが中国地方から九州北部にも広がっている。
これに近い準東京語のアクセントは東北・北海道に広がっており、
近畿・北陸・四国に展開する京阪アクセントよりも広い範囲で
日本中に分布しているのである。 |
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